論文の読み方を改めて整理(初心にかえり)

前回、KindleにPDFファイルを取り込んで、論文を読む方法についてレビューしました。
Kindleに取り込んだ論文の文章を音声でスピーチしてくれるなど、便利な機能を使って論文を読むことができます。

では、あれから、Kindleで論文を頻繁に読んでいるか?と言ったら、否です。
あんなに、熱くレビューしていたのに、なぜ??

理由は簡単です。科学論文は、文構造・文脈が理解できなければ読めず、逆にこれを理解してしまえば比較的読みやすいものだからです。PdfをKindleに取り込めたとしても、1ページあたりに表示できる内容は少ないし、項の頭にジャンプすることも出来ない。よって、一覧性に乏しく、論文の構造を把握しづらい。まして、大量の論文を読みこなしていかなければならない状況で、時間をかけて全文読んでいるのは非効率です。


ということで、科学論文とKindleの相性はあまりよくないという結論となりました。Kindleは、Kindle用に出版されているものや、Kindle形式に変換したもののために利用すべきだと思います。


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さて、前置きはこのくらいにして、今日は、主に初心者向けの論文の読み方をまとめます。恥ずかしながら、私も未だにそれほど早く論文を読むことができません(修行中の身です)。
ただ、以下示す読み方の「型」を意識しているつもりです。これだけが正しいとは思わないし、もっと効率的に読む方法があると思いますが、自分自身の整理の意味もこめてまとめたいと思います。


本日記の構成は以下の通りです。

Ⅰ.科学論文を読む前の心構え
Ⅱ.科学論文の主な構成について
Ⅲ.科学論文を読む3つのステップ
Ⅳ.(おまけ)文章の構造など

(※論文の検索の仕方は割愛します。他の人のレビューを参考にしてください。)


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まず、読む前の心構えを3つ。

1.論文を読む目的を明確にすること
2.1回で全てが理解できると思わないこと
3.「型」を意識すること

論文を読む目的はいろいろあるでしょうが、ラボで論文を紹介することになった。とか、論文執筆の考察で必要。とか、単に知識を増強したい。とかあると思います。あまり欲張りすぎずに、目的を絞って読み始めたほうが理解が早いと思います(また別の機会に、別の目的で読めばいいと思います)。

また、論文は何回も読んだ方が理解が早いです。天才やその分野に精通している人は1回読んで全て理解できるかもしれません。が、多くはそうではないと思いますし、せっかく読む論文ですから、自分の知識を拡大してくれるような、ちょっと読みなれていない内容の方がいいと思います。そういうときは、何回も何回も読めばいいと思います。

科学論文は、ほとんど型が決まっています。そして、毎回同じ「型」を意識して読むことで、読み方が定着していくと思います。


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次に、論文の構成について記します。
もう分かりきっていることかもしれませんが、科学論文はほぼ同じ構成で書かれます。なぜなら、論文は、自己満足の産物ではなく、研究成果を多くの人に知ってもらうために書かれているからです。

論文の構成は以下の通りです。

1.Title
(2.Author(とその所属機関・ラボ))
3.Abstract
4.Introduction
5.Material(Subject) & Methods
6.Results
7.Discussion
(8.Conclusion)
9.References


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@symphonicworks先生の記事(おもしろ論文は三度読む。高専〜大学生くらいからの論文の読み方)も参考にしていただきたいですが、論文を読む時、段階的に読み方を変えていくべきです。

私の読み方は以下示すとおり、全部で3つのStepsを踏みます。

Step1;論文の主旨を理解するための読み方

第1段階の読み方です。特に、ざっと読みたいとき、大量に読みこなす時は、このステップだけで十分です。(あまりたくさんのことをごちゃごちゃ知ろうとすると、かえって分からなくなるし、印象に残りません。)

手順は、
1.Titleをじっくり読む
2.Authorsを見て、どこのラボか、これまでどういう研究をしてきているかをチェックする。
(もしラボの背景がわかれば、理解の強い助けになる)(中級者向け)
3.Abstractをじっくり読む

Titleは、ばかにしちゃいけません。これだけでまず論文のイメージを作ります。(もし実際に書かれている内容を読んで、イメージと違っていたとしても、まずイメージを湧かせるのがいいと思います。0から1にするために。)

Abstractは、論文の縮図です。本当はこれだけでもいいかもしれません。

今回はもう少し進めて、あと2箇所だけ読みます。(じっくり)
4.Introductionの最終段落の最後あたり
5.Discussionの第1段落

Introductionの最終段落には、必ず研究の目的が書かれています。次に、具体的なアプローチ(戦略)が書かれています。(論文によっては、結果の要約が書かれていることもあります。)だから、ここは外せません。

次に、Resultsはとばして、Discussionの第1段落だけ読みましょう。ごちゃごちゃ書かれたResultsがきれいにまとめて要約されているはずです。

以上がStep1です。これを何回か繰り返し、論文の概略を頭に染み込ませましょう。(私みたいに物覚えの悪い人は、ここで簡単にメモとして書き出してみると、すっきり理解できるかもしれません。)

ここまでで、論文の骨格が分かりました。ただこれだけでは、目的と結論が分かっただけです。論文の結論を本当に信用してよいか分かりません。



Step2;論文の根拠を知るための読み方

根拠のない主張は、誰でもできます。根拠があるから科学的な論文となります。
そこで、Resultsを読みます。

いきなりResultsの該当箇所をだらだら読むのではなく、Figureに目を向けます。(上級の先生方だと、いきなりFigを見る人もいるかもしれません。この方が効率的です。ただ、私はそんな域に達していないので、上記の手順で論文の骨格を知ってからにしています。)

かなり念入りに見ます。そして、添付してあるレジェンド(解説文)も念入りに読みます。

そして、このFigureに記された結果を導くために用いられた方法が知りたくなるでしょう。それを知るために、「Material & Methods」を読まざるをえなくなります。また、一つ一つの結果を筆者が具体的にどう解釈して結論にもっていっているか知りたくなるでしょう。だから、「Discussion」を読みたくなります。

個人的には、ラボでの論文紹介の際に、このStep2まで早い段階で進め、「第0稿」として、資料を作成するようにしています。つまり、Title、Abstract、Purpose、Figureのみを印刷してしまって、それだけで一度頭の中でリハーサルをしてみるわけです。こうすると、客観的な視点で、論文紹介に向けて読まなければならない必要な項目が見えてきます。


Step3;さらに理解を深める読み方
Step2で、「Material & Methods」と「Discussion」が読みたくなります。また、目的に至るまでの背景も知る必要が出てきます。そこで、その欲求を大事にしながら、論文の頭から順に読んでいきます。

実は、はじめの頃は、論文をスマートに読みこなすのがかっこいいと思っていました。でも、論文を深く読み込むには、やはり全文を何度も何度も読むしかありません。ここはがんばりましょう!

ただし、上記のステップ(Step1〜2)を踏むのと踏まないのとでは、雲泥の差があります。


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最後に、科学論文に限ったことではない、一般的な文章構造について、気にかけていることを書きます。

1.文章の構造について

英語に限らず、分かりやすい文章は文章の構造があります。文章でなくても口頭説明でも心がけるべきことです。特に、英語ではこの点を強く意識しています。

これは、
「①主張→②根拠→③結論」
という型です。

また、①→②の間や、②根拠のところで、ほとんどの場合、①主張に対する反対意見 が登場します。そして、必ず、この反対意見を打ち消す構図となります。こうすることで、①主張が強まるからです。

この構造は、各パラグラフごとにそれぞれあります。一見長く見える論文も、構造を意識すると、手早く理解できます。(だから、一覧性の乏しい電子書籍で読むより、紙に印刷して読んだ方が都合がよいと思うのです。)

さらに、トレーニング中の身である私は、めんどくさいと思いつつ、印刷した論文の構造を把握しやすくするため、各段落に番号をふります。さらに、段落内で構造転換の目印となる「接続詞」を囲います。こうすることで、かなり読みやすくなるはずです。

(段落をよく見ると、だいたい、「過去・これまでの報告(文献)」(主張を支持する意見、主張とは異なる意見)をいくつか列挙し、「我々の報告では〜」よって、・・・である。という流れになっているはずです。)


2.未知の単語は接頭語などで極力予測する。重要そうな単語は念入りに理解する。

未知の単語、熟語が出てくるたびに、辞書を引き返しているとなかなか進みません。重要そうな単語に焦点をしぼり、後は予測して読んだ方が賢明です。


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以上、長くなってしまいましたが、自分自身の考えを整理する意味で、論文の読み方をまとめました。再確認の意味で読んでいただければ幸いです。




それではこの辺で!(終)